岡山の舞踊・演劇の感想

岡山のダンス(主にコンテンポラリーダンス)や演劇の感想を書きます。

日本昔ばなしのダンス『つるのおんがえし』『ねずみのすもう』レビュー

むかしむかし、あるところにむかしばなしをダンスにしようとした近藤良平と、山口夏江というふたりの振付家がいました。山口夏江は『つるのおんがえし』を、近藤良平は『ねずみのすもう』と『かきのきじろべぇ』をおもしろいダンスで、おとなもこどももたのしめる作品をつくり出しました。だからでしょうか。会場はたくさんの親子連れで、にぎわいました。

山口夏江は、稲村はるに「鶴」役を与え、宮内愛に「若者」を演じるようにいいました。そして、自分は「若者の母」になりきることにしました。若者と母親のコミカルな言葉の掛け合いに、みんなは大笑い。山口は『つるのおんがえし』を面白おかしい物語へと変えてしまったのです。ですが、物語の最後はみんながよく知っているものとは、すこし違っていました。

機を織っているところを見られてしまった鶴は帰らなければなりません。鶴が飛び去ろうとしたとき、若者は鶴とともに空へ舞い上がります。母親は手をふって二人を見送っていました。それまで、人間だった若者の背中に羽が生えたのです。若者は一瞬にして鶴になりました。

次に、サプライズで「かきのきじろべぇ」が披露されました。舞台の真ん中の椅子に座った近藤良平は、スケッチブックのように加工したダンボールを被ります。ダンボールをめくるとびっくり。ものがたりの主人公である「じろべぇ」おじさんの頭が現れます。顔の部分がくりぬかれていて、そこからダンサーは顔を覗かせています。

ページをめくるごとに「じろべぇ」さんの頭から柿の木や、どじょうが生えてきます。めくるめく変わっていく近藤さんの姿が、おかしくておかしくて子どもたちは笑いがとまりませんでした。

そして、最後の演目「ねずみのすもう」がはじまります。けれども、すぐにねずみたちは現れません。かわりに舞台に現れたのは、鎌倉道彦・藤田善宏・山本光二郎という愉快な3人のおじさんたちでした。彼らは身体をいっぱい使って、いろいろなものに変身します。3人は最初に田植えをしている農家の人たちになりきります。一人が手を水平に広げ、かかしになったかと思うと、そこから流れるように、虫やカラス、挙句の果てにはトイレへと姿を変えていきます。おとなもこどもも大よろこびです。

 楽しい七変化が終わると、彼らは並んで足を大きく広げたまま、足を空に向けて寝転んでしまいました。すると、ダンサーの手から小さなおじいさんの人形が現れます。おじいさんは、足でできた山をえっちらおっちら登っていきます。いよいよ、たのしいたのしい「ねずみのすもう」がはじまるのです。

 こうして、彼らは子ども達とたくさん遊びました。実はここで踊っていた人たちは、化けるのがとっても上手なたぬきさんだったのです。いろいろなものに化けて、こどもたちと遊んでくれたのでした。家に帰ったこどもたちは、たぬきさんたちの真似をして遊んだことでしょう。

 やがて、たぬきたちと遊んだこどもたちはすくすく成長し、想像力にあふれた立派な大人に成長しましたとさ。おしまい。

 

2023年2月19日/西川アイプラザ5階多目的ホール

日本昔ばなしのダンス

「つるのおんがえし」

構成・振付・演出 山口夏絵

出演 稲村はる 宮内愛 山口夏絵

 

「ねずみのすもう」

構成・振付・演出 近藤良平

出演 鎌倉道彦 藤田善宏 山本光二郎